CMSのスタンダードが変わるかもしれない
現在はWordPressがもっとも普及している
世の中にブログ文化が定着し、WordPressというCMSが普及するようになってからというもの、企業やサービスのホームページ制作においても、CMSのスタンダードはWordPressの状況です。
https://www.zaikei.co.jp/article/20151110/278263.html
最もWordPressが普及している背景には様々な要因がありそうですが、支持されている最大の要因はコストパフォーマンスに優れたカスタマイズ性ではないでしょうか。
なにしろ本来は数十万かけて開発してもおかしくないような機能が、無料のプラグインとして(有料だとしても安い費用で)簡単に導入できるのですから、企業も安い開発費で機能性に富んだなホームページを手に入れることができるメリットを無視することはできませんよね。背に腹は変えられませんから、当然の結果です。
サイト表示速度がより重要視されてきている風潮
ですが、ここにきてCMSのスタンダードが変わることもあるかもしれないと感じています。具体的に「どのCMSに変わる」という話ではないのですが、その理由は、サイトの表示速度が重要視されだしたことにあります。
例えばGoogleの動きもその一つです。かなり以前からサイトの表示速度についてGoogleは度々言及しています。Googleが言及するということは、遠回しにウェブマスターたちにお願いをしているということなのですが、ここ数年においては「重要視して欲しい」といったレベルからもう一歩強く踏み込んできています。
具体的には、サイトの表示速度を改善することで、ユーザの満足度や、サイトからの売り上げを大幅に改善することが出来るようなデータを公開するところから始まり、つい先日、2018年8月から極端に表示速度の遅いモバイル表示するウェブサイトの順位を引き下げると言うページスピードアルゴリズムの実施予告を発表しております。
https://www.suzukikenichi.com/blog/speed-matters-for-mobile-sites/
https://webmaster-ja.googleblog.com/2018/01/using-page-speed-in-mobile-search.html
アルゴリズムにまで話が及んでしまうと、SEO面の話で考えがちになってしまいますがそうではなくて、SEOを皮切りに、ウェブマスターがサイトの表示速度に対し、もっと深い認識を持ってもらいたいと投げかけている、と推測できるのではないかという話です。サイトの表示速度の改善はGoogleの売り上げにも繋がりますからね。
WordPressサイトの表示速度は遅い
既にWordPressを利用している方ならご存知の通り、WordPressの表示速度はとても早いと言えたものではありません。
キャッシュを作成するプラグインによって多少の改善は見られるものの、やはり純粋にHTMLで構築されたサイトに比べると遅いです。
実際に、いくつか「WordPress キャッシュプラグイン」と検索してみると良いかもしれません。キャッシュプラグインの導入により「これだけ早くなったよ!」といったデータが並んではいるものの、そのデータが掲載されているサイトの表示速度は意外に早くなかったりして「おや?」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。ページスピードをチェックするサービス上での評価が高くなってはいても、体感としてはやはりまだ遅いのです。
少し前に海外で話題になったこのサイトをモバイルで閲覧してみれば、その違いは明白です。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1711/15/news133.html
https://dev.to/
動的にURLが生成されている以上、サイトの表示速度に影響が出てしまう事は仕方がないことではあるのですが、今後10年を見たときに果たしてこの表示速度で良いのかと問われた際には、自信を持って「良い」答えることは難しいのではないでしょうか。
まだまだ遅い通信速度
世界基準でのモバイルの通信速度のデータを見ればわかるとおり、日本はモバイル通信の速度が速い国とは言えません。そしてその日本よりも通信速度の遅い国はたくさんあります。(アメリカですら日本より遅いのです)
https://iphone-mania.jp/news-197317/
※現在、日本は43位でした
日本のモバイル通信速度が遅いことに驚いている方もいるかもしれませんが、例えばデータ規制中のユーザーでしたら想像しやすいのではないでしょうか。
通信規制が行われてしまうのは、ユーザーとキャリアの問題であり、ユーザーとサービス提供者との問題ではありません。もしデータ規制中のユーザーでも、快適にウェブサイトを通じて買い物ができたり、サービスを楽しんだりすることができれば、競合に比べ優位性を出すことが出来ることは想像に難くないのではないでしょう。
Twitter社がTwitterLiteというサービスを少し前にリリースしましたが、Twitterが日本で特に普及していることを考えても、データ規制中のユーザーにもサービスを楽しんで貰うための工夫ではないかと推測できます。(もちろん世界単位でもニーズがあるためだとは思いますが。)
AMP、PWA、CDAなど…
2017年から徐々に盛んになってきたAMP対応も対応も今後重要度を増していくでしょう。AMP対応をすることで、これまでになかった表示速度をユーザーに提供できるようになります。ただ、AMP対応は検索エンジンからの流入でランディングページとなった場合に適用されるもので、さらにそこからページ遷移をする場合には、やはりサイト全体で表示速度の改善をしなくてはなりません。
またPWAやCDNといった対応も存在していますが、そこまで言及すると壮大な解説になってしまいますので、今回は割愛させてください。ですがどちらも全てを解決できる万能の記述ではありません。
WordPressにとって変わるCMSはあるのか
さてでは、表示速度が速く、かつカスタマイズ性に優れたようなCMSは存在しているのでしょうか。
HTMLベースでページ排出されるCMSに目を向けてみると、Movable Typeや、WebRelease2、NORENなど様々なCMSが存在しています。ですが、大規模なウェブサイトの運用の際には問題が出たり、大規模なサイトでも対応可能でいイニシャルコストが数百万円もしたりと、中小企業が容易に導入するにはまだまだ障壁がありそうです。(もちろん決してこれらのCMSを否定しているわけではなく、それぞれに素晴らしいメリットが存在しています。あくまでもWordPressを現在利用している多くの企業にとって、とご認識ください。)
例えそれなりに大きい企業でも、イニシャルコストが数百万円のCMSの場合、セキュリティー面や運用効率を考えれば費用対効果としては合いそうですが、全くコストが障壁にならないかというとそうではありません。これは私たちも実際にクライアントと打ち合わせして肌で感じることです。
ウェブサイト自体が売り上げを出してくれるようなサイトの場合は費用対効果の目算が立ちやすいのですが、コーポレートサイトのような場合、直接売り上げを出してくれるわけではないので、数百万円のコストが費用対効果として果たして合っているものかどうか、目算が立ちにくいのです。
つまり現状、ウェブに予算をそこまで割くことができない企業にとって、WordPressに取って代わるようなCMSが存在していない状況です。
WordPress時代が続くか、それとも…
近い将来に、WordPressのように導入障壁が低く、そして表示速度にも優れたCMSが登場した場合、まず間違いなく主流となるCMSは変わります。
ですが、先日このようなニュースもありました。WordPressの開発者会議で最大規模の「WordCamp US」にGoogleチームも参加したというニュースです。
http://gigazine.net/news/20180206-google-wordpress-accelerate-speed/
Googleの手助けによって、WordPress自体が改善するということもあるかもしれません。(多くの企業にとってはそれが最も望ましい状況かもしれませんね)
いずれにしろ今後表示速度については、より一層向き合っていかなければならない課題です。時代に取り残され売り上げを減らすことのないよう、特にウェブ制作を支援する会社はウェブ業界全体がどのような動きなのかを注視していく必要があるのではないでしょうか。