知らないうちに誘導されてる?人を操る心理学「フレーミング効果」がWebマーケティングでも超絶使えるので解説してみた
目次
日常にあふれる「フレーミング効果」とは?
今回は、「フレーミング効果」について解説していきたいと思います。もしかしたら、聞いたことがある方もいるかもしれませんね。これは様々なWEBマーケティングで非常に活用できる効果になっていまして、ぜひ学んで今後のWebマーケティングに活かしていただけるといいんじゃないかなと思います。
このフレーミング効果は、元々はトゥベルスキー氏とカーネマン氏という2人の研究者が1981年に発表した理論です。そしてこのお二人は、なんとノーベル経済学賞を受賞しているんですね。それほど、経済学の世界では非常に有名な効果なんです。
有名な実験:ジャケットと電卓、どちらで動くか
では、フレーミング効果が実際にどういった効果なのか、このお二人が行った有名な実験からお伝えしたいと思います。少し想像しながら読んでみてください。
ここに2つのグループがいます。
まず、最初のグループ(Aグループ)には、次のような状況を伝えます。
あなたはジャケットと電卓を買いに来ました。ジャケットは125ドル(約1万2500円)、電卓は15ドル(約1500円)です。さて、レジで支払いをしようとしたとき、店員さんがこう言いました。
「お客さま、ここから自転車で20分くらいのところにある支店に行くと、この15ドルの電卓が10ドルで買えますよ。5ドルお得になりますが、どうしますか?」
次に、もう一方のグループ(Bグループ)です。
こちらもジャケットと電卓を買いに来ましたが、商品の値段が入れ替わっています。電卓が125ドル、ジャケットが15ドルです。そして同じようにレジに行くと、店員さんがこう言います。
「お客さま、ここから自転車で20分くらいのところにある支店に行くと、この125ドルの電卓が120ドルで買えますよ。同じく5ドルお得になりますが、どうしますか?」
さて、あなたならどうしますか?
この実験の結果、なんとAグループの多くは「支店へ行く」と答え、Bグループの多くは「行かない」と答えたのです。
なぜ判断が分かれたのか?
これがまさにフレーミング効果です。要するに、情報の与え方によって消費者の行動が変わるということですね。
どちらのケースも、自転車で20分移動すれば「5ドル安くなる」という事実は全く同じです。もし人々がこの問題を純粋に「5ドル節約できるかどうか」という点だけで考えていたら、どちらのグループも同じくらいの割合で「行く」か「行かない」かを選ぶはずでした。
しかし、現実はそうならなかった。なぜなら、人々は無意識のうちにお金の問題だけでなく、「品物」に注目して判断したからです。
Aグループは「安い電卓がさらに5ドルも安くなるなら、それはお得だ」と感じ、20分かけて移動することを選びました。
一方でBグループは「高い電卓がたった5ドル安くなるくらいなら、面倒だからここでいいや」と感じたわけです。
このように、金額以外の他の要因、つまり「どの商品が安くなるのか」という枠組み(フレーム)によって、買うか買わないかの判断が変わってくる。これがフレーミング効果の面白いところです。
なぜ起こる?背景にある「プロスペクト理論」
では、どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。それを説明するのが「プロスペクト理論」です。
この理論によると、人は何かを購入するときに、2つの段階で意思決定をしていると考えられています。
第1段階が「フレーミング(枠組みの設定)」で、第2段階が「評価」です。
先ほどの実験で説明すると、まず人は無意識のうちに「これは5ドルの問題なのか?」あるいは「これは品物の問題なのか?」というフレーミングをします。
そしてその次に、行くか行かないかを評価するわけです。
もし「これは品物の問題だ」とフレーミングすれば、「高い電卓のためにわざわざ移動するのは面倒だ」という評価になります。逆に「これは5ドルの問題だ」とフレーミングすれば、品物が何であれ「5ドルは5ドルだ」と評価し、20分かけて走りに行くという行動の変化が起こるのです。
もう一つのカギ「心理的財布」
フレーミング効果を説明するもう一つの興味深い研究に「心理的財布」という考え方があります。これも面白い実験があるので聞いてください。
また、2つのグループに分かれて、あなたがとても見たい映画(チケットは10ドル=約1000円)を見に行く、という状況を想像してみてください。
最初のグループ(Aグループ)の状況です。
あなたは事前に10ドルのチケットを買っていました。しかし、映画館に着いていざ入ろうとしたとき、そのチケットをなくしてしまったことに気づきました。
さて、あなたはもう一度10ドルを払ってチケットを買い直しますか?
次に、もう一方のグループ(Bグループ)の状況です。
あなたはまだチケットを買っていません。映画館に着き、これからチケットを買おうとしたとき、財布から現金10ドルを落としてなくしてしまったことに気づきました。
さて、あなたは予定通り10ドルでチケットを買いますか?
この実験の結果、Aグループ(チケットをなくした人)でチケットを買い直したのは約40%だったのに対し、Bグループ(現金をなくした人)では8割以上の人がチケットを買うと答えたのです。
心の財布と現金の財布
失った金額は同じ10ドルなのに、なぜこれほど行動に差が出るのでしょうか。これが「心理的財布」の効果です。
人は意識していなくても、現実の「現金の財布」とは別に、心の中にカテゴリー分けされた「心理的な財布」を持っていると言われています。
Aグループの人は、「映画のチケット代」という心理的な財布から、すでにお金を支払済みでした。チケットをなくしたことで、同じ「映画」という目的のために、心の財布から二重にお金が出ていく感覚になり、「合計20ドルの映画は高すぎる」と感じて買い控えが起きたのです。
一方でBグループの人は、心の財布はまだ傷んでいませんでした。単に現金がなくなっただけで、「映画のチケット代」という心理的財布からはまだ1円も出していない状態です。だから、映画を見たいという気持ちは変わらず、多くの人がチケットを購入したのです。
ECサイトでの賢い活用法
さて、ここまで聞くと、実際にWEBマーケティングで活用できそうなイメージが湧いてきたのではないでしょうか。特にECサイトでは、この心理的財布やプロスペクト理論を合わせたフレーミング効果を、数字の見せ方に応用できます。
ここから導き出される、よく使われる手法を一つ紹介します。それは、
- 商品の値段が高いものは、割引があまり意味をなさない。
- 逆に、値段が安いものは、割引の効果が非常に高い。
ということです。
皆さんも普段スーパーで食材を買うと思いますが、例えば500円の商品を100円割引するチラシよりも、「150円の商品が100円引きで、たった50円で買えます!」と書かれている方が、消費者にとってはインパクトが大きくありませんか?同じ100円の割引なのに、安いものがさらに安くなっている方が、断然興味を引くのです。
これはスーパーがよく使う手法で、割引率が大きく見える安い商品で集客し、お店に来たついでに、割引されていない高いものを定価で買ってもらう、という戦略です。
ECサイト運営者の方であれば、全商品を一律で割引するよりも、安い商品だけを大幅に割引して目玉商品にし、ついでに他のものも買ってもらう、といった仕掛けの方が有効に働く場合があるのです。
金額だけじゃない!ECサイト以外での活用方法
このフレーミング効果は、金額の問題だけではありません。「物事の捉え方」そのものを変える話なので、実はECサイト以外でも日常的に利用できます。
例えば、企業のホームページにある資料請求やホワイトペーパーのダウンロード訴求が分かりやすい例です。実は多くの人が無意識のうちに、ポジティブな表現とネガティブな表現でフレーミングを使い分けています。
例えば、「集客に成功する方法」という一つの資料があったとします。
- ポジティブなフレーミング:「この方法で、集客効果が150%にアップします!」
- ネガティブなフレーミング:「これを知らないと、あなたは50%の集客チャンスを逃します!」
(※少しパーセンテージの比率が合っていなくて申し訳ないのですが)言いたいことは、「得」で表現するのか「損」で表現するのかによって、人の行動心理は変わってくるということです。
「得したい」と思っている人には前者が刺さりますし、「損したくない」という気持ちが強い人には後者が響きます。顧客の状況によって、同じ資料でもタイトルを変えるだけで、クリック率などの反応が変わってくるのです。
これはYouTubeやコラム記事のタイトル、商品名など、ラベリングやネーミングがされるあらゆる場面で応用できます。どちらの表現が響いたかなどを意識しながら活用していくと、より効果的なタイトルのつけ方ができるようになってくると思います。
まとめ
以上が、ノーベル経済学賞にもつながった「フレーミング効果」の解説でした。
「高い買い物だと、少しぐらい値段が上乗せされても気にならないな」とか、「集客のために何か良いタイトルを考えたいな」といったことは、実は誰もが無意識にやっていることだと思います。
でも、その裏にはフレーミング効果という理論があり、プロスペクト理論によって人の行動が選択され、さらには心理的財布というお金の感じ方も影響している。こうした背景を知ることで、より意図的に、効果的に人々の心を動かすことができるようになります。
今運営しているサイトのコンバージョン率を上げていきたいという方は、ぜひこのフレーミング効果を意識して、サイトのキャッチコピーや見せ方を見直してみてはいかがでしょうか。今回はさわりの部分だけお伝えしたので、さらに詳しく勉強して、ぜひ活用していただければと思います。