Web担当者必見!顧客を誘導する「アンカリング効果」の正しい使い方
目次
なぜ「10,000円が3,000円」に惹かれてしまうのか?
今回お話ししたいのは、ウェブサイトで本当によく見かける「通常価格10,000円が3,000円に!」といった価格表示についてです。皆さんも一度は目にしたことがある、おなじみの表現ですよね。
当然、これだけ多くの企業が使っているからには、しっかりとした効果があるわけです。実はこの見せ方、とある心理効果を巧みに応用したテクニックの一つなんです。
この心理効果の名前、パッと答えられますか?僕自身も、心理学の勉強をするまでは、よく見かけるなとは思っていても、その名前までは知りませんでした。
この動画の、そしてこの記事のメイントピックとなるその効果の名前は、「アンカリング効果」と言います。そう、あの価格表示は、このアンカリング効果を利用したテクニックだったんですね。
今日はこのアンカリング効果とは一体何なのか、という基本から、価格表示以外にも実は色々なところで使われている応用テクニックまで、詳しくご紹介していければと思います。
そもそも「アンカリング効果」とは?
ではまず、このアンカリング効果が何なのかをご説明しますね。
この言葉の由来は、船を港に固定する、あの「錨(いかり)」から来ています。錨は英語で「アンカー」と言いますよね。
船は港に着いた時や、海上のとある場所で釣りをする時など、波に流されないように錨を海底に下ろして、船をその場に留めておきます。錨を下ろすと、船は波や風で多少は動きますが、錨と船を繋ぐ鎖の範囲から大きく離れることはありません。
この様子になぞらえて、最初に提示された情報(アンカー)が基準点となり、その後の判断がその基準点の範囲に大きく影響を受けてしまうことを、アンカリング効果と呼びます。
日常にあふれるアンカリング効果の例
もう少し分かりやすく、私たちの身近な例で説明しましょう。
皆さんも、例えば高級腕時計を見に行った時のことを想像してみてください。お店に入って、まず100万円や200万円といった価格の時計をずっと眺めていたとします。その直後に、ふと50万円の時計を見たら、どう感じるでしょうか?
「あれ、この時計なんだか安くない?」
こんな風に感じた経験はありませんか?もちろん、冷静に考えれば50万円という金額は非常に高価です。しかし、直前に100万円、200万円というさらに高いものを見ていると、その価格に思考が引っ張られてしまい、50万円がまるで安価であるかのような錯覚を起こしてしまうのです。
これがまさに、アンカリング効果です。この効果は、別の動画でも紹介したフレーミング効果を発見した人物と同じ、ノーベル経済学賞を受賞したことでも知られる著名な心理学者が発表した、非常に有名なものなんです。
Webサイトでのアンカリング効果 活用方法
ではここから、このアンカリング効果を実際にWebサイトでどのように活用していくのか、具体的な方法を見ていきましょう。
活用法1:価格やプランの見せ方に応用する
まず一つ目は、やはり冒頭で紹介したような価格設定です。これはECサイトなどで非常に有効な手法ですね。
ただ、「それじゃあECサイト以外では使えないのか?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。この効果の本質は「最初に見せたものに引っ張られる」という点なので、価格以外にも様々な場面で応用が利きます。
例えば、料金プランの見せ方でもよく使われています。あるサービスに「A」「B」「C」という3つのプランがあったとします。この時、ユーザーにどのプランを選んでもらいたいかにもよりますが、あえて一番高いプランを最初に見せるという手法があります。
「高い」「中くらい」「安い」という順番でプランを提示することで、ユーザーの判断基準は最初に見た最も高いプランに設定されます。その結果、次に見た中くらいのプランや安いプランが、よりお得に感じやすくなるのです。
これは機能面でも同じことが言えます。一番機能が充実している最上位のプランを最初に見せることで、その後のプランを比較検討する際の基準となり、他のプランが選びやすくなる効果が期待できます。
活用法2:入力フォームの初期値でユーザーを導く
フォーム関連の改善にも、アンカリング効果は役立ちます。
例えば、申し込みフォームに「ご購入の意欲はどれくらいですか?」という質問項目があったとします。選択肢が「今すぐ購入したい」「1ヶ月後くらいに検討」「半年以内に決めたい」だとしましょう。
この時、ユーザーに一番選んでほしい「今すぐ購入したい」を、あらかじめ選択された状態(デフォルト値)にしておくのです。
するとユーザーは、「わざわざ他の選択肢に変えるのが面倒だな」と感じたり、最初に目にした「今すぐ」という選択肢に無意識に引っ張られて、「まあ、今すぐで良いか」となったりする可能性が高まります。このように、選んで欲しい選択肢をデフォルトに設定しておくのも、アンカリング効果を利用した立派な手法の一つです。
活用法3:社会的証明と組み合わせて信頼性を高める
最後は、口コミや受賞歴といった「証明」を活用する方法です。これは「社会証明の法則」という別の心理効果とも関連が深いですね。「多くの人が支持しているものは、きっと良いものに違いない」と、人間が社会的な評価を信じやすい心理を利用するものです。
これをアンカリング効果と組み合わせるには、見せる順番が非常に重要になります。つまり、「お客様満足度No.1」や「〇〇賞受賞」といった社会的な信頼性を示す情報は、ページのなるべく上部に持ってくるのが効果的です。
最初に「この商品は社会的に評価されている信頼できるものなんだ」という情報(アンカー)をユーザーにインプットすることで、その後の商品情報やサービス内容も、好意的な視で見てもらいやすくなります。
もし、こうした信頼性の高い情報をページの下の方に配置してしまうと、アンカリング効果が薄れてしまい、非常にもったいないです。アピールしたい実績があれば、ぜひページの最初の方で見せるようにしましょう。
まとめ:最初に何を見せるかがコンバージョンを左右する
ここまでいくつかの活用法をご紹介してきましたが、他にも応用できる場面はたくさんあるはずです。
重要なのは、アンカリング効果の基本である「最初に何を見せるか」という視点です。
ユーザーに伝えたい情報がいくつかある場合、一番良いもの(最も高価なプラン、最も信頼性のある情報など)を最初に提示する。あるいは、選んでほしい選択肢をデフォルトにする。
こうした発想でご自身のWebサイトを見直し、改善していくことで、コンバージョンが増えやすいサイトへと着実に近づいていくはずです。ぜひ、このアンカリング効果を意識して、活用してみてください。