【UI/UX改善】ユーザーの無意識に働きかける「メンタルモデル」を徹底解説
目次
Webサイト制作に役立つ「メンタルモデル」とは?
今回は「メンタルモデル」について解説していきたいと思います。「メンタルモデル」という言葉、ご存じない方も多いんじゃないかなと思うんですけど、これは心理学や脳神経学に近い分野の言葉です。
実はこの考え方が、Webサイトを作る上でものすごく重要になってくるんです。これを知っておくと、より良いWebサイトづくりに役立ちますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
そもそも「メンタルモデル」って何?
では、そもそも「メンタルモデル」とは一体何なのでしょうか。人は基本的に、何か新しい装置や機械に触れたとき、過去の経験や記憶を元にして「これはきっと、こういう仕組みで動いているんだろうな」と無意識に想像を当てはめて物事を見ています。
例えば、機械に赤い色のボタンがあったら、「これを押すと動くんだろうな」と、過去の経験から推測してボタンを押してみたりしますよね。これがまさに「メンタルモデル」と呼ばれるものです。人々が頭の中に持っている「こうなっているはずだ」という思い込みや先入観のようなもの、と考えると分かりやすいかもしれません。
似ているようで違う?「デファクトスタンダード」との関係
メンタルモデルと非常によく似た言葉に「デファクトスタンダード」というものがあります。デファクトスタンダードとは、「事実上の標準」という意味で、世の中に広く普及した結果、それが当たり前の規格や機能として定着したものを指します。
皆さんがお持ちのスマートフォンを例にしてみましょう。画面の上から下へスライドすると通知センターが出てきたり、上にスワイプすると画面を閉じたりしますよね。また、パソコンのキーボード配列が決まっているのも、デファクトスタンダードの一例です。
これらが普及していくうちに、「これが普通だよな」という認識が広まり、製品の機能として定着していくわけです。そして、多くの人がそのデファクトスタンダードを記憶として持っているからこそ、それが「メンタルモデル」として形成されます。この関係性があるから、私たちは新しい物事に触れた時でも「たぶん、こういう仕組みなんだろうな」と自然に行動できるのです。
あなたのサイトは大丈夫?Webサイトにおけるメンタルモデルの活用例
このメンタルモデルが、Webサイトにおいてどうして大事なのかをお伝えしていきたいと思います。
一般的なWebサイトの構成を思い浮かべてみてください。例えば、Webサイトの左上にあるロゴ、その下や右側にあるグローバルメニュー、そして右上にある電話番号やお問い合わせボタン。こうした一般的なレイアウトの中に、実はメンタルモデルがたくさん詰まっているんです。
私たちは経験上、「ロゴを押したらトップページに戻るだろうな」と知っているので、トップページに戻りたい時に自然とロゴをクリックします。また、何か問い合わせをしたいと思った時には、ページの上部にある電話番号やお問い合せボタンを探しますよね。
メニューについても同様です。「サービス」という項目があった時、複数のサービスがあるかもしれないと考えて、いきなりクリックするのではなく、一旦マウスのカーソルを文字の上に持っていき、下に詳しいメニューが開かないか試した経験はないでしょうか。これも「マウスを乗せたらメニューが開くかもしれない」というメンタルモデルが働いている証拠です。
ユーザーの期待に応えるデザインの秘訣
ということは、Webサイトを制作する側は、ユーザーが持っているメンタルモデルに応えるデザインを心掛ける必要があります。ロゴをクリックした時には、きちんとトップページへ移動するようにリンクを設定するべきですし、電話番号やお問い合せボタンは多くのユーザーが探すであろうページの上部に見やすく配置した方が親切です。
先ほどのメニューの例で言えば、メニューが開くことがより分かりやすくなるように、あらかじめ「▼」のような小さな三角の記号を付けておくと、「カーソルを合わせたらメニューが開くんだな」とユーザーが直感的に理解しやすくなります。
使いやすいWebサイトというのは、訪問してくれたユーザーがどんなメンタルモデルを持っているのかを想像しながら作っていくのが、非常に大事になってきます。
「普通は」で終わらせない!デザイナーやお客様との円滑なコミュニケーション術
このメンタルモデルという考え方は、Webサイトの制作者とお客様との打ち合わせの場でも非常に役立ちます。
例えば、お客様から「ロゴをページの下の方に配置したい」という、一般的ではないご要望があったとします。この時、デザイナーが「いやいや、普通はロゴって左上なんで」とだけ説明してしまうと、「その業界の普通なんて知らないよ。俺はここに置きたいんだ」と、お互いの意見がぶつかってしまうことがよくあります。
この「普通は」という言葉で起こる衝突は、実はメンタルモデルを説明できるかどうかで大きく変わってきます。
「普通は」と言うのではなく、「『メンタルモデル』という認知心理学の考え方がありまして、多くのお客様はロゴが左上にあって、そこをクリックすればトップページに戻ると無意識に考えています。ですので、こちらに配置した方がお客様にとって使いやすいサイトになりますよ」と説明できると、お客様も納得しやすくなります。
もちろん、その上で「使いやすさよりも、あえてロゴを下にする奇抜さを重要視したいんだ」という判断をされるのであれば、それはそれで一つの戦略です。大切なのは、なぜそのデザインが良いのかを論理的に話し合えることであり、メンタルモデルはそのための強力な共通言語になってくれるのです。
まとめ:メンタルモデルを意識して、より良いWebサイトを目指そう
以上が、少し聞き慣れないかもしれない「メンタルモデル」という認知心理学の説明でした。
デファクトスタンダードによって私たちのメンタルモデルが作られる、という関係性を理解し、それをWebサイト制作に活かすことは非常に重要です。
使いやすいWebサイトは、基本的にお問い合わせのような成果が生まれやすくなってきます。もし、あなたがご自身のWebサイトで少しでも成果を出したい、お客様にとって使いやすいサイトにしたい、と考えているのであれば、ぜひこの「メンタルモデル」という視点を持って、もう一度サイトを見直してみてください。きっと、より良いサイトへ改善していくヒントが見つかるはずです。