今回は、Webサイトの改善に非常に役立つ「マイクロコピー」というテクニックについて解説したいと思います。「そんなところまで気にしたことなかったな」という方にも、きっと新たな気づきがあるはずです。

このマイクロコピーを意識するだけで、サイトのコンバージョン率を上げたり、離脱率を下げたりといった効果が期待できます。そもそも「マイクロコピーって何?」という方も、この機会にぜひその重要性を学んでみてください。

マイクロコピーとは何か?

まず、マイクロコピーが一体何なのか、というところからお話しします。

皆さんも「キャッチコピー」という言葉は聞いたことがありますよね。「そうだ、京都へ行こう」のような、人の心を掴む印象的なフレーズがそれにあたります。

マイクロコピーは、そういった華やかなキャッチコピーとは少し違います。ひと言でいうと、ユーザーの行動をそっと後押ししたり、サポートしたりする短い文言のことです。具体的にサイトのどの部分を指すのか、例を挙げてご説明しますね。

具体例から見るマイクロコピーの世界

Webサイトを例に見てみると、例えばボタンに書かれている「資料請求はこちら」や、画面の右下によくある「ご相談・お問い合わせ」といった短いフレーズがマイクロコピーにあたります。

よくあるのが、「お問い合わせ」とだけ書かれたボタンです。もちろん間違いではないのですが、これだと少しハードルが高く感じませんか?「問い合わせ=商談」というイメージが強く、「商談するほどではないんだけどな…」とユーザーがためらってしまう可能性があります。

そこで、私たちのサイトでは「ご相談・お問い合わせ」という表現にしています。こうすることで、「まずは気軽に相談だけしてみようかな」とユーザーが感じる心理的なハードルを下げ、次のアクションへと繋げやすくする工夫をしています。

お問い合わせフォームにも潜むマイクロコピー

さらに、お問い合わせフォーム自体にもマイクロコピーは活用できます。

例えば、フォームの冒頭に「以下の6項目だけ事前にお聞かせください」という一文を添えるのはどうでしょうか。お問い合わせフォームの入力項目がずらっと並んでいると、「面倒だな…」と感じて離脱してしまうユーザーは少なくありません。

そこで、あらかじめ「入力は6項目だけで大丈夫ですよ」と伝えることで、ユーザーに「これくらいなら簡単そうだ」と感じてもらい、手軽さをアピールすることができるのです。本来なら「お問い合わせフォーム」というタイトルだけのところを、こうしたマイクロコピーで補うだけで、ユーザーの印象は大きく変わります。

有名な事例:ボタンの文言一つで行動率が変わる

私が以前に聞いた話で、非常に面白い事例があります。確か楽天トラベルさんの話だったかと思うのですが、宿泊施設を探せる予約サイトをイメージしてみてください。

サイトには宿の写真や情報が並んでいて、その横には詳細ページに進むためのボタンがあります。そのボタンの文言が、最初は「予約する」だったそうです。

しかし、「予約する」という言葉だと、ユーザーは「このボタンを押した瞬間に予約が確定してしまうのではないか?」と不安に感じ、クリックをためらってしまいました。

そこで、ボタンの文言を「予約確認」という表現に変えたところ、ユーザーが安心してクリックできるようになり、行動率が大きく上がった、という話でした。

このように、ボタンの文言一つ、ユーザーの行動を促すためのちょっとした言葉一つが、Webサイトのマーケティングを成功させる上で非常に重要になります。細かい部分なので見過ごされがちですが、その効果は絶大です。

マイクロコピーがもたらす3つの効果

マイクロコピーがもたらす効果は、主に3つあると考えています。

一つ目は、コンバージョン率の向上です。サイトの最終目標である「お問い合わせ」や「商品の購入」「予約」といったゴールへの到達率を高める手助けをしてくれます。ユーザーの不安を取り除き、背中を押してあげることで、ゴールへとスムーズに導くことができます。

二つ目は、離脱率の低下です。例えば、何かプランを契約する際に「いつでも解除できます」という一言を添えておくだけで、ユーザーの「一度契約したらやめられないかも」という不安を和らげることができます。結果として、申し込みページからの離脱や、契約後の解約率を下げる効果も期待できるかもしれません。

三つ目は、ブランドイメージの向上です。マイクロコピーは、サイト全体の雰囲気を伝える役割も担っています。例えば、「今すぐ予約だぜ!」「すぐにゲットだぜ!」のような少し砕けた口調で統一すれば、そのブランドが持つ元気で親しみやすい雰囲気をユーザーに伝えることができます。細かな言葉遣いにまでこだわることで、ブランディングにも非常に役立つのです。

効果的なマイクロコピーを作成する3つのコツ

では、実際にどうやってマイクロコピーを考えれば良いのでしょうか。ここでは3つのコツをご紹介します。

1. とにかくユーザーの気持ちになる

これは何事においても鉄則ですが、マイクロコピーを考える上でも最も重要です。実際にサイトを使うユーザーの立場になって、「こんな言葉をかけられたら嬉しいだろうな」「この表現なら安心できるな」といった視点で考えることが大切です。

2. 具体的かつ簡潔に

特に専門用語が多い業界では注意が必要です。「コンバージョン」と言われても、すぐに意味がわからない人もいます。それを「お問い合わせ」のような分かりやすい日本語に言い換えてあげる配慮が重要です。また、曖昧な表現は避け、誰が読んでもすぐに理解できるような、具体的で簡潔な言葉を選びましょう。

3. ポジティブな言葉を選ぶ

言葉の印象は、ユーザーの気持ちに大きく影響します。「〇〇してください」という少し命令的なフレーズよりも、「〇〇してみましょう」と提案するような、柔らかくポジティブな言葉の方が、ユーザーも「やってみようかな」という気持ちになりやすいはずです。できる限り、前向きな行動を促すような言葉を選んで、ユーザーに伝えてあげてください。

まとめ:言葉の力でサイトを見直そう

ここまでマイクロコピーについて説明してきましたが、もしかしたら皆さんも、この言葉を知らなくても無意識のうちに実践していたかもしれません。

しかし、「これがマイクロコピーという手法で、こんな効果があるんだ」と改めて理解することで、ご自身のWebサイトを見返す際の視点が一つ増えるはずです。「ここのフレーズ、もう少しこうした方がいいかもな」といった改善点が見えてくるかもしれません。

もしこの話を聞いて「確かに重要だな」と感じたら、ぜひご自身のサイトを改めて見返してみてください。ユーザーの気持ちに立って、「この『お問い合わせ』というボタンのままで本当に良いだろうか?」「『予約』という言葉はユーザーを不安にさせていないだろうか?」と考えてみるだけで、きっと新たな発見があると思います。